歯科のSNSやウェブサイトで、懸命にコロナ感染対策をしている様子を見かけるのですが、間違った使い方、間違った観念でPPEを使っている歯科が多い事に驚いています。もちろんきちんとしている歯科もあるのはわかります。でも、ここまでクリニックによって差が出るのは、免許更新のシステムが整っていない事も関係があるように思います。北米は、歯科医師、衛生士、アシスタント、免許の更新に必須のコースがあり単位が必要なので、現役でいるためには一生勉強です。今ウェビナーはどれも、COVID-19に関連するコースばかり。この2か月で、私は9時間以上のウェビナーを取りました。そんな事情もあり、クリニックによってここまで知識に差が出る事がないと思うのです。私自身もN95 Respirator (N95マスクとします)に関しては未知の世界でした。ただ、こういったウェビナーのおかげで、診療再開となった時に皆の知識に開きがあるという事はないです。私自身はまず、PPEを正しい順番で着脱する練習からしなくては。
何それ?と言うだけでは陰口を言っているのと同じ・・・ここは勇気を出して情報を発信していきたいと思います。事実を淡々とを目標に、でも時々毒舌になったらごめんなさい。まず、日本と北米ではそもそもCOVID19の陽性者数、死者数、致死率が違うという意見もあるでしょうし、こちらと同じ基準を勧めている訳ではないです。ただ、N95 respirator (N95マスク)やキャップ、ガウンを取り入れて、こんな対策までしています!と形をアピールする前に、PPEの役割、意味、使い方など、正しい知識が必要ではないかな、と思います。術者と患者さん両方を守るための感染対策なのに、やり方が間違っていたら本末転倒になってしまいますから。
PPEを語る前に、エアロゾル問題。こちらに関しては、↓のブログを読んでいただければ嬉しいです。
N95マスク
- フィットテストが必要です。これは皆さんが思っているほど簡単にフィットしません。数あるN95マスクですが、今手に入るからと焦ってまとめて購入したはいいけれど、このご時世でフィットしなかったからと返品出来ないので注意が必要です。ちなみに私の働くクリニックでは、7人が2タイプのマスクのフィットテストをしましたが(クリニックで手に入ったのがこの2種類だから)私ともう一人がどちらのマスクにもフィットしませんでした(汗)Aタイプがフィットしたのが2人、Bタイプがフィットしたのが3人、AB両方ともフィットした人はゼロ、という具合です。日本規格のN95だと日本人の顔にフィットしやすいのかな?と密かな疑問です。特に鼻のワイヤーはつまむのではなくて、鼻に沿わせてかなり力をいれて鼻に沿わせます。ふーっと強く息を吸って吐いてみて、鼻や横、顎から空気が漏れたらフィットテストをするまでもなく顔に合っていません。フィットテストに合格しても、これは装着する度に毎回行います。
フェイスシールド
- 世界的なN95マスク不足のため、CDCが一時的に患者毎にN95マスクを交換しなくてもよい、とインフェクション コントロールガイドラインを変更しました。ただし、内側と外側が汚れたら交換しなくてはいけません。その汚れは飛沫も含まれるので、N95マスクの延命のためにもフェイスシールドが必要だとされています。マスクの上についているタイプのシールドは、今はアウトです。また、前例がないので研究結果はこれから出てくると思うのですが、N95の上にサージカルマスクを重ね付けする方法も提案されています。内側からの汚れはメイクも含まれるので、ファンデーションは禁止です。
ガウン
- 従来ガウンの前は不潔、後ろは清潔ゾーンとなています
- ガウンの紐は後ろで結び、グローブを取った後に脱ぎ手を洗います
- そもそもガウンを着る意味は、スクラブで隠れない部分を守る意味があるので、首回りはつまっていて、長袖が必要です
- ガウンの袖はグローブの中に入れます(反対だと清潔を保って外せないから。清潔と言っても、どうしてもウィルスなど付着してしまうので、また手を洗います)
- 患者さん毎に交換します
キャップ
- 髪を全部いれないと意味がありません。ポニーテールとか前髪もキャップに入れます
- シャワーキャップタイプのキャップは、耳も入れます
- 同じくシャワーキャップタイプはSafety Glasses(保護メガネ)やゴーグルの上からかぶります。
PPEの着脱の順番は頭でわかっていても、実際の現場のストレスで固まる事も多いかと思います。私はこのステップをラミネートして診療室に貼る予定です。
PPE着脱の順番
https://www.cdc.gov/hai/pdfs/ppe/ppe-sequence.pdf
着る順番
- ガウン
- マスク
- ゴーグル
- フェイスシールド
脱ぐ順番
- グローブ
- フェイスシールド
- ゴーグル
- ガウン
- マスク
これらを付けたまま、院内をウロウロしない事も重要です。
それから、歯科のSNSやウェブサイトで、怪しい水やアルコール消毒をアピールしている所が多くて、それもちょっと心配です。コロナウィルスは Low Level Disinfectantで死にますが、HIVや肝炎は、アルコール ではだめです。アメリカはEPAという機関がDisinfectantなどを取り締まっています。アルコールでユニットを拭ている写真なんかを見せられると、はて?と思う訳です。アルコールは血液のたんぱく質を凝固させるので、アルコールで拭ているとなると、石けん水?みたいなので拭いてからアルコール、さらにキャビワイプとか?いや、まさか・・・と心配になります。受付のカウンターを拭ています、とかならいいのですが。
それから、日本の歯科ではサージカルマスク(医療用マスク)にもグレードがないとか。こちらはASTMという機関が認定していて、フィルターのレベルなどで3段階に分かれています。私が働いているクリニックは、いつでもレベル3(最高レベル)ですが、レベル1はぺらっぺらです。
とりあえず、今気になった事です。後ほど付け足していくかもしれません。